相続ブログ

2022年07年02日

遺言信託

数次相続

 死後20年ほど経った相続での銀行口座の解約依頼を受け、手続きをしていたのですが、相続人を調べると養子の子が存在したことに加えて、数次相続であったことが発覚しましたが、新たに発覚した相続人と連絡を取り、無事手続きが完了しました。

相談内容

 銀行口座の解約のときからお話は伺っていたのですが、手続きが完了したことでさらに信頼していただき、依頼者の死後についてもご相談いただきました。

 依頼人には軽度の知的障害を有する子がおり、依頼人自身も高齢となってきたことから、子のこれからの生活についてお悩みでした。子はこれまでお金の管理をしたことがなく、銀行口座の管理などはこれまで依頼人が行ってきました。このような状況のため、依頼人の死後に子は生活、お金の管理の問題を解決したいと考えていました。

遺言の方式による信託の設定

 遺言の方式による信託の設定を遺言信託と言います。遺言の方式は、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言のいずれでも可能です。言うまでもなく、公正証書遺言が最も優れています。

負担付遺贈

 これまで知的障害者などの親なきあとの問題は、負担付遺贈という遺言の形で解決が図られてきました。しかし、義務を履行しない場合の遺言の取消しの問題など負担付遺贈の制度での限界が問題視されてきました。これを補うのが信託制度というわけです。

遺言信託による障害者支援

 これまで負担付遺贈では確実ではなかった障害者の子(受益者)への確実な生活費等の給付と確実で長期的な財産管理が確保できることが最大の利点です。信託は契約ですので、その内容は遺言者が自分の意思で決めることができます。しかも、遺言だけではできない子の死後についての財産の帰属先まで決めておくことができます。

受託者との打ち合わせが必要

 信託で子の財産を管理していくことになるのは受託者であり、遺言信託の効力発生は遺言者の死後であるため、受託者との事前の打ち合わせが必須となります。信託業法との関係で、司法書士などの専門職は信託事務代行者にはなれても、受託者になることは難しいという現実があります。ご親族の方に受託者として就任してもらい、我々は信託事務代行者として支援していくことなるでしょう。

どの制度を利用すべきか

 今回の相談では、遺言と信託を比べると信託を利用したほうが良さそうだということになりますが、それは相談者とその子の個別の事情を斟酌するとそうなるというだけです。負担付贈与はその財産は受贈者のものとなってしまいますが、信託では誰のものでもない受託者が管理する財産となります。そのため、受贈者への抑止力は取消権となりますが、この点は信託法による規制と比べると心もとないとも言えます。受贈者が絶対的に信頼できる場合もあるでしょうし、そうではなく子のために少しでもリスクを減らしたいとする選択もあるでしょう。また、今回の相談では提案しなかった法定後見との組み合わせもあり得ます。すべては個別の事情によるのです。

 そもそも親なきあとの障害者支援などの問題はどこに相談したらいいかわからないという方も多いと思います。選択肢は一つではありませんし、個別の事情を伺わないとどれが適切なのか判断ができないのが現実です。四日市相続センターでは初回無料相談を実施しておりますので、こちらをご活用いただきたく存じます。些細なことでもお気軽にご相談ください。いなべ市、桑名市、東員町、菰野町、木曽岬町、朝日町、川越町、四日市市、鈴鹿市、亀山市、津市の相続登記、預貯金や株式などの遺産整理業務、遺言、相続放棄、成年後見、家族信託のご相談は四日市相続センターにおまかせください。

司法書士・行政書士 森田直宏

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